イーヴォ・ポゴレリッチ 2023年1月 東京芸術劇場 サントリーホール 浜離宮朝日ホール の感想

コロナ騒動で2年間止まっていたポゴレリッチの来日(泣)

今年ようやく来日してくれて、今回は読響との共演とピアノソロリサイタルというスケジュールでした。

ピアノソロはいつものサントリーホール浜離宮朝日ホール

私はポゴレリッチのピアノソロはサントリーホールでしか聴いたことがなく、最高級の音響のホールだといつもガンガンいい音響かせてくれるけど、小さいホールだとどんな音で聴こえるんだろう?聴いてみたいなーと思っていたので浜離宮はテンション上がりました♪

公演日程は

1/7  1/8 東京芸術劇場

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番

山田和樹指揮 読売日本交響楽団

1/11  サントリーホール(オールショパンプログラム)
ショパンポロネーズ第7番 「幻想ポロネーズ
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
ショパン:子守歌 変ニ長調 op.57
ショパン舟歌へ長調 op.60

 

1/13  浜離宮朝日ホール
ショパンポロネーズ第7番 「幻想ポロネーズ
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49
ショパン舟歌 嬰ヘ長調 op.60
シューベルト:楽興の時 D780 op.94

 

まず東京芸術劇場での読響との共演。私は1月7日公演の方を聴きにいきました。

芸術劇場でポゴレリッチを聴くのは初めてです。

当初はプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番だったのですが、ポゴちゃんご本人の希望によりラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番に変更になりました♡

実は私はプロコフィエフがあまり好きではなく。。。そしてラフマニノフの2番は大好きな曲なので、ポゴレリッチの演奏で生で聴けるなんて♪と、読響から曲目変更のお知らせメールが来た時から嬉しくてたまりませんでした^^

お席は2階M列の真ん中あたり。ステージの見え方はこんな感じです。

私は音響の違いがそれほど分からないので2階席でも音は良かったです。

初めてリアルタイムで聴くポゴレリッチのラフマニノフは、ちょっとだけ、あれ?という印象でした。なんとなく音がスカスカしていたような。。。サントリーホールで聴きなれているからかな?

 

気を取り直して、

1/11  サントリーホール!待ちに待ったこの日、私もちょっとオシャレして出かけました(笑)

このホールの魅力の一つは客層がいいこと。来場客は装いも華やかで、自分もちょっとグレードアップしたような気分になれます。

私は30分前に着き、白ワイン(600円)で1人乾杯しながらしばしマン・ウォッチング。

ワインを飲み終え、開演前の客席に着くと、ステージ上にいたいた(笑)今やトレードマークとなったチェックのフリースを着た巨体がちょこんとピアノの前に座ってジャズ風な音楽を奏でていました。

ポゴレリッチはなぜか開演前にステージに出てきてピアノを弾くのです。リハーサルでもなく、ただポロポロ弾いている。そしてたまにちょっと客席の方を見る。

この姿を見るたびに、なんか変わった人だなあ。。。でも、大好き。と改めて、素直にしみじみ思います。

開演前に、普段着で、ステージに出てきて微かな音でピアノを弾く(聴いたことのない曲なので、即興??)。こんな世界的ピアニスト、いるだろうか。

しかも風貌もけっこうスゴイ。

190㎝はあると思われる巨体(でっかい!)かつ坊主頭。そしてその頭には毛糸の帽子。。。顔はけっこういかつい感じはあるのに毛糸の帽子でちょっと可愛くなっている。→なんか面白い。

そして極めつけは、自ら場内アナウンス!(笑)

開演15分前くらいになると関係者から促されてステージ奥に引っ込んだポゴレリッチ。

そして開演5分前くらいに、サントリーホールの女性スタッフの落ち着いた声でお客様にお願い申し上げますアナウンスが流れます。月並みな、「場内での撮影、録音は固くお断りいたします」的なご注意が一通り流れたあと、聞き覚えのある男性の声で英語でアナウンスが!

そうです。なぜかポゴレリッチ本人が英語で(私は英語はよく分からないですが)アナウンス(笑)

「ポゴレリッチのピアノリサイタルにようこそ。緊急時には座席に座って。。。」というようなことをしゃべった後に、「プリーズエンジョイ♪」どうぞ楽しんでください♪とジェントルメンな締めくくり!客席からはちょっと笑いが漏れていました。

自ら開演前のアナウンスをする世界的ピアニストなんて聞いたことない。でも、ポゴレリッチのそういうところが好きだなあ。なんというのか。。。愛、感じます。自ら観客一人一人に話しかけて、楽しんで聴いていってね♪と言っているような。

主にヨーロッパ中で演奏活動をしているようですが、どこの公演でも事前に自分でアナウンスしているのでしょうか?それとも日本だけ?梶本音楽事務所に聞いてみようかな。。。

そして開演。スポットライトを浴びてステージに出てきたポゴレリッチは燕尾服に着替えて本当にいい男。長身で足が長く、黒い燕尾服がよく似合います。(でも坊主(笑)

そして演奏の方は、全曲通して愛とロマンにあふれたドラマチックな音でした。

テンポはゆっくりめではありますが、私は気になりません。ポゴレリッチはピアノの弦の響かせ方がハンパなく良いのです。若干ゆっくり目ゆえにピアノのドラマチックな響きがドーン、ジーン、ズシーンと心に響いてくる。この響きはポゴレリッチ独特のもので、ピアノではない楽器のようにさえ思えます。他の世界的ピアニストと聞き比べましたがこのような響きを出せる人は誰もいません。

以前NHKで奈良のお寺で演奏したときのインタビューを見ましたが、「演奏活動を休んでいたときに自分の音に耳を傾け様々な角度から何度も聴き返した。縦や横の響きだけでなく三次元的な奥行にも注意して聴きました」と話していました。

本当に相当聴きこんだのが分かる音です。

終演後はアンコールに応えて2曲も演奏してくれました。

曲名は自らステージ上で英語で「前奏曲 嬰ハ短調 op.45」と「ノクターン ホ長調 op.62-2」と客席に語りかけ、ご機嫌が良かったよう。

アンコール後は椅子を足でピアノの下にしまって「今日はこれでおしまいネ」の合図笑

客席とポゴレリッチの一体感が感じられる一夜でした。

なぜかサントリーホールでは客席の方々とポゴレリッチがファミリーのような空気を感じます。(私はいつも1人で聴きに行くので誰とも話さないのですが、なんとなく連帯感があります)

 

1/13  浜離宮朝日ホール

佐渡裕さんからお花が届いていました

やはり開演前に小さめステージに出てピアノをポロリポロリと弾くポゴレリッチがいました(笑)

なんだがジャズ風のカッコイイ曲を弾いていて、その曲目教えて!と言いたいところですが即興っぽいです。そういえばポゴちゃんはアートテイタムとかオスカーピーターソンが好きだそうです。ジャズもけっこう聴いているのかもしれません。

この日はシューベルトの楽興の時を弾いてくれました。

個人的にはこの日はシューベルトが一番良かったような気がします。

秋、黄色い落ち葉が舞い散るヨーロッパの石畳を散策しているようなイメージ、または大切な人と一緒にゆっくりと語らっているような心地よさを感じました。

そしてこの日はアンコール3曲も弾いてくれました。曲目はサントリーホールのアンコール曲と同じ2曲と、あと1曲はポゴちゃんが何か言っていましたがよく聞き取れませんでした(笑)

サントリーホール以外でポゴレリッチを初めて聴きましたが、サントリーホールよりは響きは小さいけれど、それはそれでピアノの音が太くよく聴こえてよかったです。

ルガーノのポゴレリッチの私邸には小さなコンサートホールがあるそうですが、そこで聴いてみたい!観客は私1人で、曲はプーランクかなあ♪など妄想してしまいました(笑)

 

今回の演奏を通して感じたことは、ポゴレリッチは本当の愛を知っているのだということでした。音から愛が溢れている気がします。音楽への愛、作曲家への愛、ピアノへの愛、聴衆への愛、自分自身への愛、そして亡くなった奥様アリスさんへの愛。

アリスさんが亡くなってからずいぶん時が経っていますが、彼女への愛はずっと残り続けているのでしょう。

ポゴレリッチの愛(演奏)を今でも私たち聴衆が受け取れるのは、アリスさんのおかげかもしれません。そう考えるとアリスさんにも感謝、です。

 

梶本音楽事務所ツイッターによると、ポゴレリッチは2024年も来日予定だそうです♡♡ドビュッシー弾いてくれないかなあ。喜びの島が聴いてみたい!!